教えて!恋愛の女神様
「さすがにそれくらいは知っています。だから『悲劇の画家』って呼ばれていたってことも」
「うん、そうだね。ただ彼の絵を実際に見ると、なかなか絵が売れなくて苦労していたって感じはしないね」
「本当!絵具をキャンバスにたたきつけるように描いているのを見ると、『今回こそ良い絵を書いて売ってやる!』って思っているように見える」
「色使いも明るし。とても心を病んでいたようになんか思えない」
「そうなんですか?」
「ああ。ゴッホは色々人生に挫折しっぱなしだったんだ。絵描きになる前、画商の店員、牧師志望の学生、伝道師見習いとやったんだけど、どれも進路に失敗してやむなく画家になったんだ。弟のテオに支えてもらってね。ゴッホは十年間、絵を描くことに打ち込んだんだ」
「へぇー」
「でも絵が売れなくて、心の病が良くなったのに、弟のテオにこれ以上迷惑をかけたくないと思ったのか、自ら命を絶った」
「そうなんですか?」
「うん」
「なんか、切ないな…」
「そうだね、切ないね」
私は改めて絵を見た。不遇の人生を生き抜いた生い立ちを知った後で見ると、『ひまわり』はより美しくリンとして見えた。降りかかる逆境も、恐れをなして逃げそうな気がした。
(私は今のところアルバイトもできるし、短大にも通えている。けっこう恵まれているのかも。良い男に恵まれなくて嘆いている自分って、小さいなぁ…)
そう思わずにいられなかった。
 一通り絵を見終えると、夕飯を食べるため近くにあるイタリアン・レストランに入った。それぞれ注文すると、水を一口飲んで店内をグルリと見回した。
「すてきな雰囲気のレストランですね」
「気に入った?」
「はい!」
「よかった。ここ、図書館司書の仲間に教えてもらったんだ。明日お礼を言っておくよ」
「すいません、気を使わせて」
「そんなことないよ。知佳ちゃんが喜んでくれれば十分だよ」
「今回の展覧会の事も調べたんですか?」




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