教えて!恋愛の女神様
「もちろん」
今井の目がキラリン、と輝いた。
「恋愛の女神様である」
「恋愛の女神様!」
「そうである」
今井はさらに十字架を私の顔に近づけた。いや、今井の顔も近づいてきた。私は押されるようのけぞった。
「なんじ、恋の事で悩んでおるな?」
「れ、恋愛は何かと悩みがつき物でしょう?」
「さよう。そしてなんじの悩みは、深き事のように感じる」
「まあ、深いと言えば、深いですね」
「われは全てお見通しじゃ」
私はドキッとした。
「なんじ、自分は愛される価値がないと思ってはいぬか?」
グサッ、図星である。
「図星のようじゃの」
「はあ……」
「自分が、『価値がない』と思っている物を他人が『価値がある』と思ってはくれないぞ」
「はあ……」
「もっと己に自信を持って。『私は愛される価値がある』と」
「そうだよ、知佳ちゃん。もっと自信持って」
「裕矢さん」
「鉄平の事を気にしているなら大丈夫だよ。確かにアイツはひどい男だけど、だからって知佳ちゃんもヒドイ女にはならないよ」
「本当にそう思いますか?」
「もちろん。アイツの女ったらしは、筋金入りだからね。普通の女の子じゃ太刀打ちできない」
裕矢の言葉にホッとする。彼ならどんなことも受け入れてくれそうな気がした。
「そら、この青年も言っているじゃないか。よいな、自分に自信を持つんじゃぞ。『自分は愛される価値がある』と」
「はい」
「ちゃんとわかったか?」
「はい!」
「よろしい。それでは私は次の者のところへ布教に行く」
「あ、ありがとうございます!」
「うむ」
今井はエラい人のように大きくうなづくと、ローブの裾をひるがえし店の外へ出て行った。店内にはまだ人がいたが、チラリとも見なかった。
(私だけのために来てくれたのかな?)
思えば、心が温かくなった。
「そう言えば知佳ちゃん。今日は家に帰って大丈夫?」
「どうしてですか?」






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