教えて！恋愛の女神様

　涙がセキを切ったようにあふれた。フラれた夜の悔しさがまだ残っていたかのように、どんどんあふれた。
　すると裕矢がそっと抱きしめてくれた。ジンワリと伝わってくる体温が、とても心強かった。
「鉄平、もう十分だろ。知佳ちゃんはヨリを戻す気はない。さっさと帰れ」
「イヤだよ。そんな事言うなよ」
「これまでのお前の行いが悪かったから、こういう結果になったんだ。良い機会だ、十二分に反省しろ」
裕矢は私の体から手を放すと、鉄平の腕をつかみエレベーターの前へ引きずって行こうとした。
　とたん、鉄平は裕矢の手を振りほどき勢いよく私へ近づいてくると、後ろからガバッと抱きしめた。
「キャァーッ！」
「何するんだ、お前！」
「知佳、本当の本当は、俺とヨリを戻したいんだろ？二度と会いたくないなんてウソだろ？」
「イヤッ、放してっ！」
「そうだ、放せ鉄平！」
「俺は今でも知佳を愛しているんだ！ちゃんと愛しているんだ！だからヨリを戻してくれ！」
「放せって言っているだろ！」
「いでっ！」
裕矢は鉄平の足を思いっきり踏んだ。すると鉄平は私から手を放し、後ろへ飛びのいた。
「ぐおっ！」
すかさず裕矢は鉄平の左頬を殴った。本日二回目だ。さすがに利いたらしく、ヨロヨロ歩けば腰が手すりにぶつかった。
「いってぇーっ！」
「知佳ちゃん、行こう」
「え？」
裕矢は私の手をつかむと、エレベーターへ向かって走った。鉄平はチラリとも見なかった。
「裕矢さん、どこへ行くんですか？」
「俺の家」
「裕矢さんの家？」
「そう」
話している間にエレベーターの前を通り過ぎ、奥にある階段を降りた。私は後ろを振り向きつつ階段を下りた。
「知佳、待ってくれ！」
ふいに鉄平が叫んだ。まだあきらめていないらしい。私と裕矢は必死に階段を駆け下りた。