教えて！恋愛の女神様

（こんな時間に突然やって来て非常識な女と思ったかな？意外とそうでもないかな？）
すると、背中にフワリと誰かの手が触れた。見れば裕矢だった。
「大丈夫？」
「けっこう、不安……」
「俺が守るから心配しないで」
「はい」
まもなくして裕矢のお父さんがキッチンから現れた。手にはお盆を持っていて、上には麦茶の入ったグラスが三つ乗っていた。
「まあ、飲んで」
私と裕矢へ差し出せば、残りの一つを持って反対側のソファーに腰を下ろした。半分以上飲めば、まっすぐに私たちを見てニッコリ笑った。
「なんだか不治の病を宣告された患者みたいだな」
「あの、父さん」
「す、すいません！」
私は裕矢の言葉をさえぎり、体を半分に折るよう深々と頭を下げた。
「こんな夜中に急に来てすいません。すぐに帰りますので、お許しください！」
「そんな大きなお声を出したら、みんなびっくりして起きてくるよ」
再び裕矢のお父さんは笑った。彼の声は穏やかだった。
「私は怒っちゃいないよ。裕矢も年頃だ。思いを寄せる女性がいてもおかしくはない。それに、君たちにも何か言い分はあるだろう。それを聞く前に怒る気はない」
「え……？」
「たしかに、いきなり夜中にやって来るのは常識に反している。でも、こういう行動を取るにいたった理由は、もしかすると『こうせざる負えなかった』と言うことも考えられる。病気にかかってしまったのが、『やむおえない理由』みたいなものかな」
「はあ……」
「たとえば、お酒の飲み過ぎで肝臓の調子が悪いと言う奥さんがいたとしよう。飲み過ぎた本人が悪いのはもちろんだが、理由が『旦那さんの給料が減って、でも子供はお金がかかる時期になった。家のローンもあるし、しかたなくお金が稼げる水商売の世界に入った。そしてお付き合いでお酒を飲むようになったら、肝臓を壊した』ならその人を『ダメ人間』と言うのは違うだろ？」
「はぁ……」
「まずは、君が我が家へ来た理由を聞かせてもらおうかな？」