教えて!恋愛の女神様
私は慌てて口元を両手で押さえた。ロマンスは串に残っていた団子を全部口の中に放りこむと、ニヤニヤした。
「そ、そんな事ないですよ」
「ここの父親は大人だのう。夜中に突然やって来た娘をニラみつけようともしない。舅としては、最高ランクだ」
「なんかイヤらしい言い方ですね」
「イヤらしいか?私はなかなか奥深い事を言っておるがな」
「奥深い?」
「さよう。付き合って終わりなら相手だけを見ていればいいが、結婚となるとそうはいかん。男は父親の影響を、女は母親の影響を少なからず受ける。親を見れば、その相手の本性もそこそこわかる。これはかなり重要だぞ」
「そんな事を言ったら、明日お父さんがお母さんにどう接しているかによって、裕矢さんだけじゃなく、翔太さんの真の価値も見えるじゃないですか」
「真とまではいかなくとも、『ここ一番にどう反応するか?』はわかる」
「ここ一番?」
「みな、いつも順風満帆とはいかぬだろ。その人間の真価は、苦しい状況でこそ発露する。追い詰められ、けなされ、もう逃げ場がないが戦わなくてはならない。そういう状況で、弱い者なら共にいる者に責任を負わし逃げる。だが強い者は違う。己にも非が無かったか考え、できるだけ感情をコントロールし、冷静に対応するだろう」
「つまり、できた人は他の人に『八つ当たりしない』って事ですか?」
「その通り」
ロマンスは大きくうなずいた。
「でもよく考えたら、結婚を意識して彼氏を探すのは早くありませんか?私、まだ十九歳ですよ」
「たしかにまだ早いかもしれない。しかし、アタイはいつまでもお主のそばにはいられない。教えれる時に教えないと」
「えっ、いなくなるんですか?」
「うむ。こう見えてアタイは忙しいんだ。お主以外にもモテ子に育てねばならぬデキの悪い信者がいるからな。あっちこっち出張せねばならん」
「で、でも、結婚するまで教えてくれないと、また失敗するかもしれませんよ」
「いいじゃないか、失敗したって。成功するまでやればいいんだよ」
「そんな……また悲しい思いをするのはイヤです」
「そうだな。悲しい思いをするのはイヤだな」
「だったら、ちゃんと見ていてくださいよ。私が幸せな結婚するまで見守っていてくださいよ」
「さきほども言ったが、それは無理だ」
「そんな事、言わないでくださいよ!」







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