教えて!恋愛の女神様
「何でそんなに俺を馬鹿にするんだよ」
「馬鹿にしていない。もしもの事があってからでは遅いから言っているんだ」
「兄さんはいつもそうだ。『もしも』の事なんてめったにないのに、妄想して気に病んでいる。それを押し付けるのはやめてくれ!」
「今回は妄想なんかじゃない。本当にヤバいんだ!」
「だったら一人でしょい込もうとするなよ。俺も手伝うから」
ふいに居間のドアが開いた。出て来たのはお母さんだった。
「さっきから何をモメているの?」
「ああ、ごめん。気にしないで、もう終わったから」
「兄さん、勝手に終わらせるなよ。まだ話はすんじゃいない」
「俺はもう終わったよ。さ、知佳ちゃん。学校へ行く準備をしよう」
「待てってば!」
翔太は、私の手を引いて階段を上ろうとした裕矢の肩をつかんだ。裕矢はムッとした顔で振り返った。
(もっとモメそう!)
私は瞬時に思った。お母さんもハラハラした様子で見ていた。
 すると張り詰めた空気を破るよう、玄関のチャイムが『ピンポーン』と鳴った。
「はーい」
お母さんは急いで居間に入った。ドアホンで訪ねて来た人を確かめるらしい。私はドア越しにお母さんの話を聞くことにした。ニラみ合っている二人を見るのは辛かった。
 お母さんの声は張りがあるので、ドア越しでもよく聞こえた。『あら、おはよう。わざわざ来てくれたの?』と言う親しみのこもった言葉から推測して、知っている人に違いない。
 五分ほどで戻ってくると、お母さんは翔太を見て言った。
「エリカちゃんが来たわ。行ってあげて」
予想外の人の登場に、私と裕矢は驚いた。翔太はますますイラだった顔になった。
 私と裕矢は学校や仕事へ行くため、翔太はエリカへ会いにそれぞれ動いた。部屋へ戻る途中、今日の日程を話し合った。

「着替えとか授業を受けるのに必要な物とかあるようだったら、一度家へ寄ろうか?」
「送って行ってくれるんですか?」
「もちろんだよ。同じ所へ行くんだもの。わざわざ別に行く事はないだろ」
「助かります」
「自然も『ありがとう』って言っていると思うよ。二人が一台の車で行くんだ。エコロジーだろ?」






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