教えて!恋愛の女神様
「そんな……」
「俺には君の失敗を許すだけの余裕はないんだ。失敗したら、それでジ・エンドだ」
「翔太!」
「もう少し早く気持ちを伝える事ができたらよかったんだろうけど、言ってもきっと怒鳴られて受け入れてもらえないと思っていた。気が付いたら、好きって気持ちはなくなっていて、恨みばかり募っていた」
「これからちゃんと翔太の言う事を聞くわ!だからやり直しましょうよ!」
エリカは勢いよくベッドから立ち上がった。しかし翔太は首を横に振った。
「ごめん、ムリだ」
「どうして?一度くらいチャンスをくれてもいいじゃない」
「俺には、君といる未来は絶望の色に染まっているとしか思えない」
「…………!」
「真っ黒で、一点の灯さえ見えない。聞こえてくるのは怒鳴り声か、高飛車な笑い声だけ。絶対、行きたくない!」
「ねえ、そんな事言わないで。お願い、一回で良いからチャンスをちょうだい!」
「イヤだ!俺は解放されたいんだ!ドレイに戻りたくない!」
絶叫に近い声は、部屋中に響き渡った。いや、一階や三階にも響き渡った。全員身支度を整えていて静かだった事もあり、翔太の声はかなりクリアに聞こえた。
 驚いた私や裕矢、お父さん、お母さんは、翔太の部屋の前に駆け付けた。すると、部屋から泣いているエリカが飛び出して来た。
「エリカちゃん!」
裕矢は慌てて後を追いかけた。残った私達は、お父さんを先頭に翔太の部屋の中へ入った。
「翔太、いったい何があったんだ?」
「ごめん、驚かせて。でも、大した事じゃないんだ。別れ話でちょっとモメただけだから」
「ちょっとって……翔太はめったに大声出して怒鳴るような子じゃないわ。よほどの事があったんじゃない?」
「いや、俺も悪かったんだ。ついモメるのがイヤで言いたい事を黙っていたから。それがさっき大爆発したって感じ」
「エリカちゃんとは別れるのか?」
「うん。俺とは合わないんだ」
「そうか。おまえがそう判断したのならかまわないよ。自分をしっかり持って生きたらいい」




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