教えて!恋愛の女神様
ほぼ予定どおり八時二十分に作業を終えると、荷物を裕矢の車の後部座席に積んで大学へ向かった。大学の一丁手前で右折し駐車場に車を停めると、裕矢はビジネスバッグを、私は必要な教科書やファイル、ルーズリーフなどを鞄につめ、校舎へ向かって歩いた。
「一応携帯電話の電源は入れておいてくれる?何かあった時にかけてくれれば、すぐ助けに行けるから」
「はい、そうします」
私は不安に駆られつつも、携帯電話をバッグから取り出し電源を入れた。するとディスプレイには、『電話、着信あり。五十六件。メール受信、六十件』と表示されていた。数字を見たとたん激しい恐怖に駆られ、心臓がバクバク鼓動を打った。
(たぶん、全部鉄平からだ。なんて執念なの!)
「大丈夫?」
「えっ?」
「顔色悪いよ。メール、何か嫌な事でも書かれてあった?」
「いいえ、そうじゃなくて。すごい数の電話がかかってきたし、メールが来ていたんで驚いたんです」
「誰から?」
「たぶん、鉄平だと思います。今、確認してみます」
意を決し、まずは電話の着信履歴からチェックした。案の定、そこには『鉄平』の名前と彼の電話番号がズラリと並んでいた。メールの受信トレイを開いても同じで、私はどちらもすぐ削除した。
「ずっとそばにいてあげられなくてゴメンね」
「いいえ。仕事する事はとても大切だと思います。私の事ばかり気にせず、集中してください」
「ありがとう。じゃ、何かあったら電話して」
「はい」
中央棟の正面玄関の前で別れると、私はそのまま中央棟の中に、裕矢は図書館へ向かって歩き出した。
(よし、ここからは自分で自分を守らなきゃ。がんばるぞ!)
心を引き締め講義のある三号館へ向かった。







< 209 / 238 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop