教えて!恋愛の女神様
エレベーターは誰に邪魔されることなく八階に着いた。降りれば左右に延びる廊下の左側へ行き、五枚目のドアの前で止まった。
翔太はチャイムを鳴らしもせず、持っていた合鍵で鍵を開け中に入った。玄関には見慣れた赤いパンプスが、揃えずに脱ぎ捨てられていた。
十畳ワンルームの部屋へ続くドアは開けはなたれ、女の子らしいピンクや赤、白で統一されたかわいらしい装飾の室内が垣間見えた。掃除は隅々まで行き届き、派手な見かけによらずきちんとした女の子だと言う事がわかった。
そんな中、部屋の真ん中に置かれた白い楕円形のテーブルの上に乗った紙袋やアルミ製のシート、缶ビールが見えた。午前八時にはひどくミスマッチだ。玄関にいながら聞こえてくる水の流れる音も、違和感をかきたてた。
-翔太と父は、『何かがおかしい』と思った。
「翔太。俺はここにいるから、部屋の中へ入ってエリカちゃんがいるかどうか見てこい」
「うん」
「何かあったら、すぐ呼びにくるんだぞ」
「わかった」
翔太はスニーカーを脱ぐと、居間へ入った。ぐるりと見渡すと、テーブルの上におかれた紙袋には精神科の病院名が印刷されていて、浴室に続くドアが空いている事に気づき見れば、中から水の流れる音が聞こえてきた。吸い込まれるよう近づくと、そのドアを内側へ押し開いた。
とたん、翔太は目を見開き呼吸を止めた。
「父さん、来て!」
今まで生きてきた中で一番切ない声で父を呼んだ。
「どうした翔太!」
父ははじかれたように部屋の中へ入り、開け放たれた左側のドアの奥、うずくまる息子へ駆け寄った。医者の第六感が危険信号を発していた。
翔太は気を失ったずぶ濡れのエリカを腕に抱きかかえていた。浴槽は、コックを全開にした吐水口から出る水で満タンに満たされていたが、真っ赤に染まっていた。
「翔太、避けろ!」
父は往診カバンを浴室の入り口に置くと奥へ入りこみ、翔太に抱きかかえられたエリカを見た。エリカの左手首は真横に切られ、ダラダラと血が流れていた。すぐそばの床には、厚手の段ボールを楽々解体できそうな、大ぶりのカッターが転がっていた。刃には、ベッタリと血がついていた。
翔太はチャイムを鳴らしもせず、持っていた合鍵で鍵を開け中に入った。玄関には見慣れた赤いパンプスが、揃えずに脱ぎ捨てられていた。
十畳ワンルームの部屋へ続くドアは開けはなたれ、女の子らしいピンクや赤、白で統一されたかわいらしい装飾の室内が垣間見えた。掃除は隅々まで行き届き、派手な見かけによらずきちんとした女の子だと言う事がわかった。
そんな中、部屋の真ん中に置かれた白い楕円形のテーブルの上に乗った紙袋やアルミ製のシート、缶ビールが見えた。午前八時にはひどくミスマッチだ。玄関にいながら聞こえてくる水の流れる音も、違和感をかきたてた。
-翔太と父は、『何かがおかしい』と思った。
「翔太。俺はここにいるから、部屋の中へ入ってエリカちゃんがいるかどうか見てこい」
「うん」
「何かあったら、すぐ呼びにくるんだぞ」
「わかった」
翔太はスニーカーを脱ぐと、居間へ入った。ぐるりと見渡すと、テーブルの上におかれた紙袋には精神科の病院名が印刷されていて、浴室に続くドアが空いている事に気づき見れば、中から水の流れる音が聞こえてきた。吸い込まれるよう近づくと、そのドアを内側へ押し開いた。
とたん、翔太は目を見開き呼吸を止めた。
「父さん、来て!」
今まで生きてきた中で一番切ない声で父を呼んだ。
「どうした翔太!」
父ははじかれたように部屋の中へ入り、開け放たれた左側のドアの奥、うずくまる息子へ駆け寄った。医者の第六感が危険信号を発していた。
翔太は気を失ったずぶ濡れのエリカを腕に抱きかかえていた。浴槽は、コックを全開にした吐水口から出る水で満タンに満たされていたが、真っ赤に染まっていた。
「翔太、避けろ!」
父は往診カバンを浴室の入り口に置くと奥へ入りこみ、翔太に抱きかかえられたエリカを見た。エリカの左手首は真横に切られ、ダラダラと血が流れていた。すぐそばの床には、厚手の段ボールを楽々解体できそうな、大ぶりのカッターが転がっていた。刃には、ベッタリと血がついていた。