教えて!恋愛の女神様
「知佳ちゃん、行こうか」
「はい」
裕矢とともに教室を出た。騒ぎが起きたので、学生課に行ってこれまでの経緯を話さなければならなかったが、裕矢がケガをしたので手当てをするのが先だった。教室を出ようとすると灯達は『大丈夫?』と心配してくれた。彼女たちの優しさに、かなりホッとした。
 裕矢は私のあげたハンカチで傷口を押さえ、私と一緒にタクシーに乗り大学の近所にある外科の病院へ行った。診察の結果、傷口は深く長く切られていたため、消毒した後医療用のホッチキスで五針留められ、包帯でまかれた。裕矢は少しの間通院する事となった。
 待合室で診察代などの計算が終わるのを待っている間、私は申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「すいません……」
「そんなに申し訳ない顔をしないで。俺まで申し訳ない気持ちになる」
「でも、痛かったでしょ?ナイフを出されて怖かったでしょ?」
「うん、まあね。ただ、俺も男だからさ。昔はヤンチャして一杯傷を作ったから、その時を思い出したかな」
「裕矢さんて、本当に大人ですね。私だったら、こんな目に遭ったら相手を恨んじゃうと思うから」
「俺だって、誰でも許すわけじゃないよ。知佳ちゃんだから許すんだよ」
「えっ?」
「愛する人を体を張って守るのは当然だろう。だから、そのせいで傷を負ったとしても許すさ。『名誉の負傷』だって、みんなに自慢するさ」
裕矢の力強い言葉に私はジン……とした。
「さっき鉄平が脅して来た時さ、不思議と怖い気はしなかったんだ。『知佳ちゃんを守るぞ!』って思うと、心の底から勇気がグーン!とわいてきたんだ。たぶん、あれが愛のパワーなんだろうね」
「すごくカッコ良いですね」
「だろう?ようやくわかった?」
ニカッと裕矢は笑った。すると彼の名前が呼ばれ、受付へ清算しに行った。彼の後姿は、とてもリりしかった。
 裕矢が彼氏になれば、本当に素敵だと思った。
 突然、携帯電話がメールを受信した。
(こんな時間に誰だろう?)





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