教えて!恋愛の女神様
「いいえ。ちゃんとしようと思ってしたんです」
「それって、この前言っていた『少し時間をください』、の答えって事?」
裕矢は自信なさそうな瞳で私を見た。迷子になって困っている子供みたいだ。私は彼の目をまっすぐ見つめると、力強くうなづいた。今度彼は、戸惑った目で私を見た。
「いいの?翔太じゃなくて、いいの?」
「はい。私は裕矢さんと付き合いたいんです。翔太君じゃありません」
「それは翔太がエリカちゃんのところへ戻りそうだから、俺と付き合うんじゃないよね?」
「私、そこまでひどい女じゃないですよ。翔太君より裕矢さんが好きだから付き合いたいと思ったんです」
話終えると、裕矢の目が涙で潤みだした。一度目をそらしグスッと鼻をすすれば、息ができないほど私をきつく抱きしめた。
「もう翔太と付き合いたいって言ってもダメだからね。知佳ちゃんは、俺の女だからね!」
「はい」
「ねえ、夢じゃないよね?君は本当に俺を好きなんだよね?」
「ええ、そうです。裕矢さんが好きです」
「抱きしめ終えたら違う人になったりしないよね?翔太のところにいたりしないよね?」「大丈夫ですよ。裕矢さんが私を好きでいてくれるほど、私はまだ裕矢さんを好きじゃないけど、本当に裕矢さんが好きなんです」
私は裕矢の背中に手を回した。彼の背中はかすかに震えていた。
「確かに最初は翔太君が好きでした。アイドルみたいにオシャレだし、カッコイイし、でもチャラくないし、優しいし。医大に通ってるってところも魅力的でした。彼なら『付き合っている人だ』って、みんなに自慢できると思っていました」
私はハアとため息をついた。
「だけど、私をいつも励ましたり守ったりしてくれたのは、裕矢さんだった。翔太君じゃなかった。私、ダメな男と付き合ってばかりいたから、心がささくれて、すごく嫌な女になっていたんです。でも、そんな私を見放さずいやしてくれたのは、裕矢さんだった。裕矢さんの愛だって気づいたんです」
裕矢は私を見つめた。その距離二十センチ。恋人の距離だ。
「まだ傷は完全に癒えていないから時々ひどい事を言うかもしれませんけど、付き合ってくれますか?」







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