教えて!恋愛の女神様
「ロマンス、待って!」
「そろそろ帰る時間だ。すまぬな」
「ねえ、お願いがあるんです!」
「この後に及んでまだ言うか。強欲だのう」
「もし寿命が尽きて空の上に帰る事になったら、一番に出迎えてハイタッチしてくれますか?『良く帰ってきたな』って、ハイタッチしてくれますか?」
「ハイタッチ?お安い御用だ。千回でも一万回でもしてやるわ」
「よかった、帰るの楽しみになってきた」
「アタイも楽しみだよ。失敗しないよう、たくさん練習しておくよ」
ロマンスは親指を立ててニッコリ笑った。
「じゃあ、達者でな」
言い終えれば、スーッと音もなく消え去った。
「ロマンス?」
確かめるように呼んでみる。しかし返事はない。あたりを見回しても、誰もいない。
「本当に行っちゃったの?空の上に帰っちゃったの?」
部屋の中はどこまでも静かだった。鏡台の上に置いてある携帯電話を開き確認しても、メールは来ていなかった。
「本当に、帰っちゃったんだ……」
すごく悲しくなり、涙が頬を伝った。ロマンスと過ごした日々が頭の中を走馬灯のように駆け巡れば、もっと涙がこぼれた。どれも大変だったが、愛に包まれた日々は全部楽しい思い出。全ての経験は魂に深く刻まれた。
 私は涙をふかず天井を見上げると、ニッコリ笑った。
「今までありがとうございます!近いうちに串団子を一杯持ってお礼詣りしに行きます!」
返事は聞こえなかったが、ロマンスは『おう!』と言った気がした。
 翌日。荷物をまとめ、お父さんとお母さん、翔太君、お手伝いさんにお礼を言うと、午前七時三十分に裕矢の車に乗って、私の住むマンションへ向かった。
(裕矢さんのお父さんとお母さん、とってもいい人だったな。私もあんな夫婦になりたいなぁ)
私のマンションに着くと荷物を下ろし、今日の講義に必要な勉強道具を準備した。ゆっくりしている時間はなかったが、しっかりキスだけした。
「じゃあ、お昼にまた会おう。勉強頑張ってね」
「裕矢さんも、お仕事がんばってね」






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