教えて!恋愛の女神様
大学の中央棟前で背中合わせで別れると、私は二号館へ、裕矢は図書館へ向かった。でも、もう一回彼の顔が見たくて振り返ると、裕矢も振り返り私を見ていた。
「バイバイ」
「バイバイ!」
ニッコリ笑って別れると、軽くスキップしながら歩いた。ここへ来るまでいろいろあったが、実際付き合ってみるととても素敵だった。
 その夜バイトに行き、いつも通り午後十時まで働いた。午後十時二十分には家に着いて部屋に入ったが、やっぱりロマンスはいなかった。メールも来ていなかった。
「好物の串団子買ってきたのに……本当に本当に帰っちゃったんだ」
もしかしたらいるかもしれないと思ってちょっぴり悲しくなった。
「もう、食べちゃおう!」
カバンも下ろさずテーブルの上に串団子の入った袋を置くと、座ってパッケージを開いた。両手に一本づつ取れば、ムシャムシャと食べた。
「全部一人で食べちゃうんだから!」
わざと大きい声で言った。ロマンスに聞こえるんじゃないかと思って。しかしやっぱり返答はなく、うっすら涙がにじんだ。
「会いたいのにな……」
涙と一緒に食べたみたらし団子は、ちょっぴりしょっぱかった。
 土曜日。夜のアルバイト以外の予定がなかったので、裕矢に手伝ってもらって新しく住むマンションを探す事にした。鉄平はしばらく入院しているので襲われる心配はなかったが、いつ退院するとも限らない。できるだけ早く見つけたかったので、ゆとりを持って探す事にした。
 いや、その前にやる事があった。
「裕也さん、先に行きたいところがあるんだけど」
「いいよ。でも、部屋探しは急がなくていい?」
「すぐ終わるから大丈夫」
裕矢の運転する車に乗り、不動産屋とは反対の方向へ向かった。通り道にあった和菓子屋で『ある物』を買えば、再び目的地へ向かった。
 十分後に着いたのは、隣の区にある多岐神社。ロマンスの人間界での家だ。昔からある商店と住宅に囲まれた神社の鳥居は小ぶりで、赤壁のお社もこじんまりしていた。ただ、掃除は隅々まで行き届き、おみくじをを売っている神主さんはとても人が良さそうだった。






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