教えて!恋愛の女神様
「でしょ?」
私たちは顔を見合わせゲラゲラと笑った。
「いや、でも、申し訳ない事をしたな。名セリフを言う前に、俺落しちゃったよ」
「本当、なんかさみしい!」
「よし、じゃあ第二候補は何?それなら言わせてあげられるかもしれないよ」
「んー、そうね。あ!『君は俺にとって、どストライクだ!』」
「お安い御用です、お嬢様」
裕矢はプロポーズするかのように腰をおとし、地面に片膝を着くと、右手を私へ向かって伸ばし左手を胸に当てた。
「知佳、君は俺にとってどストライクだ!」
「キャハッ!ありがとう!」
私達は神社の境内だと言う事も忘れ抱き合った。神主さんが苦笑いしている気がしたが、気にしない事にした。
 ようやく本殿に向かうと、お参りの前に賽銭箱のそばにある台の上に、和菓子屋で買った串団子を置いた。
「その団子、自分で食べるために買ったんじゃないの?」
「うん。この神社に住んでいる神様にそなえるために買ってきたの。ここの神様、串団子が好物だから」
「つまり願いが叶ったお礼に、お礼参りだけじゃなく供物を備えるってわけか」
「そういうこと」
「そんなによくしたら、また何か願い事叶えてくれそうじゃない?」
「今は素敵な彼氏ができたから、それで充分!」
「謙虚だねぇー」
「あんまり欲張ると疲れちゃうもん。だからひどまず、今の幸せをかみしめようと思うんだ」
「それは素晴らしい!」
私と裕矢はそれぞれ十円玉を一枚ずつ賽銭箱に入れると、二礼二拍手一礼し、手を合わせた。もちろん私はロマンスに『修行のおかげで無事彼氏ができました。ありがとう』とお礼を言った。裕矢は何かしらお願い事をしているようだった。
 お祈りを終えると、腕を組んで参道を歩き、駐車場へ向かった。この後不動産屋へ行き、マンションを探す。
「裕矢さん、何をお願いしたの?」
「ナイショ」
「あら、教えてくれてもいいのに」






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