教えて!恋愛の女神様
 中に入ると、いつ掃除したのか思い出せないそこはカビと汚れにまみれ、ものすごく汚かった。掃除するのはあきらかに大変だった。
「いや、やると言ったからにはやるぞ!」
ゴム手をはきスポンジと風呂用の洗剤を持つと『よし!』と気合いを入れ、浴槽の掃除から始めた。ゴシゴシゴシ、こすってはシャワーで流し、こすってはシャワーで流した。風呂が終われば引き続きトイレの掃除をした。案の定、きれいになるのにかなり時間がかかった。
「も、もうダメ……」
なんとか掃除を終え、浴室兼トイレから出て来て時計を見ると、すでに午前七時を回っていた。
「もう七時なの。ウソーッ!」
ショックだった。少しでも早く終わらせて、余裕でゴミを捨てようと思っていたのに、風呂とトイレの掃除だけで二時間もかかってしまった。
(どうしよう……このままじゃ、いつになったら修行してもらえるかわからない)
これからの展開を思うと、軽くヘコんだ。
 できるだけ早くモテ子に変身し、手ひどく振られた自分から卒業したかった。そして最愛の男性に会い『君は運命の人だ』と言ってもらいたかった。その道のりは考えていた以上に遠そうだった。
(やっぱりダメなのかなぁ。これからもずっと悪い男にひっかかって、幸せになれないのかなぁ……)
睡眠不足に空腹感も手伝い、すっかり意気消沈した。考えれば考えるほどお先真っ暗だった。
「ほらよ」
すると目の前に、おにぎりが二つ乗った皿が現れた。皿を差し出したのはロマンス。彼女は笑っていた。
「腹減ったろ、食えよ」
「……これ、どうしたの?」
「米が炊き上がったから作ったんだ。中身は梅干しだけどよ、味は折り紙つきだ。マジ、うまいぜ」
私は急に目頭が熱くなった。ロマンスの優しさが嬉しかった。
「ほら、あったかいうちに食え」
「うん」








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