教えて!恋愛の女神様
「ランチをごちそうします。もちろん、学食じゃありません。この近所においしいカレーを出す店があるんです。そこへ行きましょう」
「いや、そんな!とんでもないです。本を拾っただけですから。気にしないでください」
「……俺とご飯を食べえるのは、イヤですか?」
「そんなことないです!ただ、初対面なのにご飯をご馳走になるなんて、申し訳ないと思ったんです」
「そう、よかった。じゃ、正門のところで十二時に会いましょう」
「いや、ですから……」
「では、用がありますのでここで失礼します」
裕矢は白衣の裾をひるがえすと、さわやかな風を残し去っていった。翔太は申し訳なさそうな顔でペコリと頭を下げると、重そうに本を抱え階段を下りて行った。裕矢とは対照的に弱腰な感じがした。
(翔太君、大丈夫かなぁ……)
彼の事が心配でたまらなかった。
 しばらくの間ボーッとしていたら、左の視界端に白い物が見えた。『何だろう?』と思いカウンターを見ると、奥から白衣を着た女性が様子を確かめるよう、あちこち見ながら出て来た。
(もう一人図書館司書の人がいたんだ!あの様子、今モメていたのを聞いていたに違いない!)
急に恥ずかしくなり、図書館を飛び出した。
 私は中央棟の右側に立つ二号館へ向かって走った。一講目の講義を受けるため歩いている学生が何人もいたが全員追い越し、わき目も振らず建物の中へ駆け込んだ。あまりにも勢いがついていたため、建物に入る時玄関のドアにぶつかりそうになった。
 何も考えず一階にある談話室に入れば、部屋の一番奥の席に座り体を抱きしめた。室内には何人か学生がいたが、気にする余裕はない。受けた衝撃が収まるのを待つので精一杯だった。
 私の体は震えていた。心臓がバクバクと激しい鼓動を繰り返し、今にも倒れてしまいそうだった。
 翔太、裕矢との出会い、裕矢からの誘い……全てが予想外で信じられなかった。夢を見ていたのではないかと思った。ベタな確認方法だが、左手で頬をつねってみた。思い切り。
「いてっ!」

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