教えて!恋愛の女神様
同時刻、空の上。そこはとても高い高い空の上。ジェット機で飛んでも届かないほど、すごく高い空の上。たくさんの雲がジュウタンのようにみっちりと敷き詰められ、ウットリするほどきれいな満月が、漆黒の闇にぽっかり浮いていた。
その満月の美しさに目もくれず、酒を飲む一人の女がいた。そばに従者と思われる男が一人立っていた。
女は三十代半ばくらいで、卵型の顔に少々吊り上り気味の目をしていて、腰まで届く長い髪をこめかみの高さでポニーテールに結い上げていた。そこだけ見れば普通だが、彼女はちょっと……いや、かなり変わった服装をしていた。つやつやと輝く布で作られた、真っ赤な特攻服を着ているのだ。夜目にも鮮やかに生える色だ。
-まるで、ヤンキーだ-
印象的なのは、服の背中に大きくししゅうされたピンク色のバラの絵と、黒い糸で刺繍された詩。
-愛する男のためなら、喜んで散らしましょう、この命-
その詩は、彼女の生きざまを強く物語っているように見えた。
女は、突然『はあ』とため息をついた。そして女性らしい色白の手の中にすっぽり収まる小さなグラスに入れた焼酎をぐびぐび飲んだ。そばには中ぶりで緑色のガラス瓶に入った焼酎が置かれ、中身が半分くらい減っていた。今宵、つい一時間前にフタを開けたばかりなのに。すごい減りようだ。
案の定従者である今井は、女性に苦言を吐いた。
「飲みすぎかと思いますが…」
「頭にきているんだ。しかたなかろう」
「ですが、このままでは明日に差し支えると思われます」
「だったら今川、そのテレビ、早々に消してくれ」
「えっ?」
今井は体をビクリと震わせると、右側に置いた薄型のテレビをチラリと見た。すぐ女性を見れば、申し訳なさそうな顔で深々と頭を下げた。
「申し訳ありません。それはできません」
「アタイに酒を飲むのをやめて欲しいんだろ?だったら、ストレスの原因である『地上の映像』を消すのが一番だ。ほら、早く消しな」
「申し訳ありません。やはりそれはできません。日本をお作りになられたイザナギ様、イザナミ様より『ロマンス様がちゃんと仕事をできるよう見守って欲しい』と仰せつかっております。簡単にやめる事はできません」
その満月の美しさに目もくれず、酒を飲む一人の女がいた。そばに従者と思われる男が一人立っていた。
女は三十代半ばくらいで、卵型の顔に少々吊り上り気味の目をしていて、腰まで届く長い髪をこめかみの高さでポニーテールに結い上げていた。そこだけ見れば普通だが、彼女はちょっと……いや、かなり変わった服装をしていた。つやつやと輝く布で作られた、真っ赤な特攻服を着ているのだ。夜目にも鮮やかに生える色だ。
-まるで、ヤンキーだ-
印象的なのは、服の背中に大きくししゅうされたピンク色のバラの絵と、黒い糸で刺繍された詩。
-愛する男のためなら、喜んで散らしましょう、この命-
その詩は、彼女の生きざまを強く物語っているように見えた。
女は、突然『はあ』とため息をついた。そして女性らしい色白の手の中にすっぽり収まる小さなグラスに入れた焼酎をぐびぐび飲んだ。そばには中ぶりで緑色のガラス瓶に入った焼酎が置かれ、中身が半分くらい減っていた。今宵、つい一時間前にフタを開けたばかりなのに。すごい減りようだ。
案の定従者である今井は、女性に苦言を吐いた。
「飲みすぎかと思いますが…」
「頭にきているんだ。しかたなかろう」
「ですが、このままでは明日に差し支えると思われます」
「だったら今川、そのテレビ、早々に消してくれ」
「えっ?」
今井は体をビクリと震わせると、右側に置いた薄型のテレビをチラリと見た。すぐ女性を見れば、申し訳なさそうな顔で深々と頭を下げた。
「申し訳ありません。それはできません」
「アタイに酒を飲むのをやめて欲しいんだろ?だったら、ストレスの原因である『地上の映像』を消すのが一番だ。ほら、早く消しな」
「申し訳ありません。やはりそれはできません。日本をお作りになられたイザナギ様、イザナミ様より『ロマンス様がちゃんと仕事をできるよう見守って欲しい』と仰せつかっております。簡単にやめる事はできません」