教えて!恋愛の女神様
 午前十一時五十分。談話室を出ると足早に歩き出した。これから裕矢に告げる言葉を考えるとまた焦りが募り、体をアクティブに動かさずにいられなかった。少しでも気を紛らわせたかった。
 正門のそばに着いたのは、午前十一時五十五分。思っていたより早く着いた。それでも私はやっぱり気持ちが落ち着かず、携帯電話を取り出し受けたメールのチェックをした。着信音が鳴っているのは気づいていたが、チェックするまで余裕がなかった。
 ふいに、ロマンスに言われていた宿題を思い出した。宿題を終えたら、家へ帰るつもりだった事も。
(しまったー!もうお昼だ。すっかり忘れていた!やっばい、こんな事している場合じゃない、とっとと宿題を解いて帰らなきゃ。ロマンス、お昼ご飯食べられないかもしれない!)
私は慌ててメールのチェックをやめ、検索できるサイトにアクセスすると、必死に調べた。制限時間は四分。裕矢が来るまでに調べ、ランチを断ったら速攻家へ帰ろうと思った。
 同時刻、再び空の上。
「知佳さん、思い出したようですよ」
「こいつ、なかなか見込みがあるかもしれんな」
様子を見ていたロマンスと今川は満足げな様子でうなずいた。ちなみにロマンスは今川の作った冷麺を食べていた。一時間前におなかを空かせ、我慢できずに作ってもらったのだ。知佳の努力は無駄に終わりそうだった。
 ロマンスは冷麺を汁まできれいに平らげると、空いたどんぶりを今川に渡した。
「ご馳走様、うまかった。また作ってくれ、気に入った」
「ありがとうございます。食後にコーヒーはいかがですか?」
「いや、いい。すぐ地上へ降りる」
「どこへお行かれになるんですか?」
「手がかかるが、成長が大いに見込みのある信者のところだ」
「もしかして……昼食をご一緒されるのですか?」
「ああ、そのつもりだ」
「これは申し訳ありません。普通にお食事を用意してしまいましたので、あまりお召し上がる事ができませんね」





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