教えて!恋愛の女神様
「おい、今井、アタイにもっとヤケ酒を飲ませたいのかい?」
「ち、違います!」
「じゃあ、何で邪魔すんだよ!」
「わ、私に妙案がございます。テレビならいつでも消せます。その前に、ぜひお聞きくださいませ」
つねに穏やかにいる今井が、珍しく声を張り上げ叫んだ。女は少し驚いた様子で胸の前で腕を組むと、大きくうなずいた。
「いいだろう、聞こうじゃねぇか」
闇に浮いた満月が、不敵に笑う女を怪しく照らしていた。

 再び地上、人間界。失恋の痛手にすっかりヘコんだ私は、体の中にある水分を出し切るかのごとく、号泣していた。
「もう恋なんてしない!ぜったいしない!傷つくのはイヤっ!」
声を張り上げ、のどが裂けそうな勢いで叫ぶ。しかし、漆黒の闇は私の叫びを跳ね返すことなく吸い込んでいく。どんどん、どんどん吸い込んでいく。あまりにも吸い込みが良いので、そのうち大きな不幸となって跳ね返ってこないか心配になった。
(でも涙が止まらない。止められない。どんなに泣いても胸が痛くて苦しくて、滝のようにあふれてくる。たぶん、これまで付き合ってきた男達にひどい仕打ちをされて、涙を止める脳細胞が傷ついて、とうとう壊れちゃったんだろうな)
『ワァワァ』泣き続けながら思う。そうでなければ、もうそろそろ泣き止んでいるはずだ。『絶対』と言い切る自信があった。
 ボロボロになったバッグの中から携帯電話を取り出し時間を見れば、三十分も泣いていた。普段どんなに苦しい思いをしてもここまでひどくない。
-間違いなく、涙をとめる脳細胞は壊れている-
そして、追い打ちをかけるイヤな物を目にし、胸がズキッと痛んだ。
-携帯電話の待ち受け画面は、まだフラれた男とのツーショット写真だった。-
写真は初デートの日、遊園地で撮った。写真の中の私は、すごく嬉しそうに笑っていた。
(この頃は、本当に幸せだった)
回想し、また胸が痛んだ。











< 6 / 238 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop