教えて！恋愛の女神様

ロマンスはますます不敵に笑うと、『腹が減った』と言って冷蔵庫を開けた。私は彼女の様子を疑いのまなざしで見ていた。

　翌日、金曜日。いつもより少し緊張しつつ一日を過ごした。明日のアルバイトの事を考えると、なんだか落ち着かない。初めての仕事だから何をすればいいのかわからず、緊張せずにいられなかった。
　学校から帰って来ると、掃除機をかけつつ色々考えた。
（こんなに緊張するんだったら、いっそ裕矢さんに電話して、仕事の詳しい内容を聞いてみようかな？内容がある程度わかれば、グダグダ悩む必要ないもんね）
掃除機をかけるのをやめ、携帯電話をスカートのポケットから取り出しかけようとした。
　しかし時刻を見てやめた。
（まだ午後四時十五分か。裕矢さん、仕事中だな。あと一時間は待たないと聞けない。……しょうがない、待つか）
電話をかけるのをあきらめ、再び掃除機をかける事にした。
　掃除機をかけていると、ふとある人の事が気になった。
（ロマンスは今、何をしているのかな？）
今日はまだ姿を見せていない。毎度神出鬼没だが、悩んでいる時こそ姿を見せ知恵を授けて欲しかった。そうすれば、もっと楽に生きれるのにと思った。
（そうそう。せっかくだから恋愛と言わず、仕事の方も助けて欲しい。神様なんだもの、それくらい朝飯前でしょ？）
しかし同時に、疑問も浮かんだ。
（神様もお医者さんみたいに、得意分野があるのかな？恋愛科、仕事科、家族関係科みたいに）
再び掃除機をかけるのをやめ、考える。
（と言うより、ロマンスって本当にご利益のある神様なのかな？）
これまで教えてもらった事を振り返りながら思う。
（恋愛指南本みたいに、『ああすれば、男はフラッとくる』とか、『こうすれば男は落ちる』みたいな事は教えてくれない。言っている事は正しいけど、こう迫力にかける気がする。なーんか信じてついて行っていいかどうか、わからなくなってきた）
急にロマンスに対する信頼が失せた。