教えて!恋愛の女神様
私は地面にさんざん叩きつけてボロボロになったバッグをつかむと、いつ逃げようかと後ろの音に神経を集中させた。涙は一瞬で止まった。
(これ以上、傷つくのは嫌だ。何としても逃げる!)
私は決意を固めると、ユラリと立ち上がった。
(絶対、逃げ切ってやる!)
「まあ、そう怖がるな。アタイは何もしやしないよ」
「????」
想像もしなかった事を言われ、びっくりして振り返った。ヤンキー女は胸の前で腕を組み、好意的に笑っていた。腕の上に乗った胸は、すごい巨乳だった。
 しかし私は信じられなかった。男にフラれたことで、すっかり疑心暗鬼になっていた。
「そんなにアタイが怖いかい?まあ、こんな恰好していちゃ、そう思われてもしょうがないか」
私は答えない。いや、答えられない。怖すぎて、声を上げることができない。
「これでもけっこう良い奴なんだぜ」
「誰が良い奴って言ったんですか?」
「アタイの最愛の男」
私は突然、嫉妬の炎がメラメラと燃え上がった。今、私が一番欲しいものだから。
 すると女はフッと馬鹿にするよう笑った。私はさきほどまで怖がっていたのも忘れ、食ってかかった。
「何がおかしいのよっ!今のアタシ、超どん底な気分なのに。マジ、ムカツク!」
「ずいぶん立ち直るのが早いと思ってな」
「ハッ?もしかして最初から見ていたっていうの?」
「ああ、そうだ。それが仕事だからな」
「仕事?人が苦しんでいるのを見るのが仕事だっていうの?サイテェー」
「苦しむというより、喜怒哀楽の積み重ねを見るといったほうがいいな」
「ちょっ……何のぞき見してんだよ!人が笑ったり泣いたりするのは見せ物じゃないんだよ。とっとと去りやがれ、クソババァ!」
「すまんな。しかし仕事だけに見ねぇわけにいかないんだよ」













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