教えて!恋愛の女神様
(私、そんなに頼りなく見えるのかな?まあでも、気にしてもらえるのは嬉しいな)
裕矢に『おはようございます。もう少しで家を出ます。今日はよろしくお願いします』と返信メールを送ると、次に時間を確認した。午前八時、予定通りだ。
 昨日のうちに用意しておいた黒いバッグを右手に持ち黒いパンプスを履けば、はりきって家を出ようとした。
「スーツ、なかなか似合うではないか」
後ろから声がしたので振り返ると、真っ赤な特攻服を来たロマンスが腕を組んで立っていた。
「私、スタイル良いですからね。当然でしょう」
「ほほう、大した自信ではないか。まるで別人のようだな」
「ロマンスの特訓のおかげかも」
「そうだろぉー。ようやくアタイのすごさがわかってきたようだ」
ロマンスはニヤけながら『ムフフ』と笑った。
「では、今日も修行をするか」
「あっ、ごめんなさい。もう行かなくちゃ。バイトに間に合わない。帰ってきたらくわしい事聞きますから」
「ダメだ。今聞かないとできない」
「けど、バスに乗り遅れちゃう!」
私は身をひるがえすと、ドアノブに手をかけ出ようとした。かなり切羽詰まっていた。
「男をほめろ!できるだけ多くな!」
「えっ?」
「恥ずかしがるな。ちょっとした事でいいからホメるんだ」
「えっ?」
振り返ると、もうそこにロマンスの姿はなかった。
「男をホメる?それが修行?」
私は小首をかしげた。しかしすぐハッとして部屋を出て、鍵をかけた。
 この修行が考えていた以上に効果があるとも知らずに。
 
 家を出て二分ほど歩きバス通り沿いの道に出ると、すぐにバス停がある。バスはバス停で四分ほど待つと、すぐやって来た。バスはそこそこ混んでいたので座れず、真ん中あたりの吊革につかまり立った。目的地であるBホテルに着くには、ホテルの手前にあるバス停で降りればよかった。
(ホテルのそばにあるバス停には、十二、三分で着く。多く見積もっても八時二十分ごろには着いて、二十五分にはホテルに入れるな)












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