教えて！恋愛の女神様

「アンタが去らねぇなら、アタシが去ってやる！じゃあなっ！」
私はあまりにも頭にきて、全速力で走って帰ろうと思った。非常識な女と一秒でも一緒にいたくなかった。
　しかし女の横を通り抜けようとした時、彼女はとんでもない言葉を口にした。
「モテる女になりたくないか？」
「えっ？」
私は前のめりになりながら止まった。振り向いて見れば、彼女は不敵に笑っていた。
「モテる女になりたくないかと、聞いているんだ」
「そ、そりゃなりたいけど……」
「本当にか？」
「ほ、本当だよ。モテる女になったらこんなひどい目に遭わなくてすむでしょ？沢山男が寄ってくるんだもの。少しでもアタシを利用しようとしたり、将来伸びなさそうだったりブ男だったら、追い払えばいいんだもの」
すると女は大きなため息をついてガックリとうなだれた。そして私を見れば、もう一度ため息をついた。
「何よ。その『最悪』みたいなため息」
「ああ、確かに『最悪』だ。変な男が寄ってくるのも当然だと思った。ただ『やりがい』はある」
「やりがい？」
「そうだ。男に遊んでは捨てられ続ける『都合のいい女』を、男が追いかけずにいられない素敵な女へ変身させる。こんな機会そうはない」
「そうはない？私って、そんなにひどいの？」
「オサナイ、チカ」
「な、何で私の名前知っているの？」
「それは後でのお楽しみ」
「は？」
「覚悟はいいか？アタイの修行は長くて辛いぞ」
「う、うーん。辛いのは嫌い」
「辛いのは嫌いか。だったら修行をするのは難しいな」
「誰だって辛いのは嫌いでしょ」
「確かにそうかもしれないが、あえて苦難に立ち向かわなければ、一つ上のランクの自分に会う事はできない」
「そ、そんな事ないよ」
「アタイの修行は自分を変える事。他人ではない。自分を変えるのは、とても大変だ。多くの勇気がいる」
「勇気？」
「そうだ。己が変わるたび、取り囲む状況はどんどん変わっていく。素敵になる分、悪かった部分とはお別れしなければならない。それは、今とても大切にしている物を捨てる事でもある」