教えて!恋愛の女神様
「お嬢さんは、今日、裕矢の仕事を手伝ってくれているのかい?」
「はい、そうです」
「彼女は長内知佳さん。俺が働いている大学の短大部に通っているんだ。この前仲良くなってね。今日予定が空いているっていうから、手伝てもらったんだ」
「そうか、それはありがとう」
「いえ、とんでもないです!私の方こそアルバイトを紹介してもらって助かりました。おかげで家賃が払えます」
「一人暮らしをしているのかい?」
「はい。実家は北海道なので、とても自宅からは通えません」
「エラいね。ちゃんと一人で生活しているんだ」
「そんな……仕送りもしてもらっています」
「今後もその調子で頑張って。なんなら息子からバイト代をふんだくっていいから」
「父さん!」
「じゃ、打ち合わせしに行くよ」
裕矢の父は右手を軽く揚げると、颯爽と二つ隣にあるホール前へ行き、待っていた担当者と挨拶を交わした。そしてすぐホールの中へ入って行った。彼の後ろ姿はとてもカッコよかった。
 私は嬉しいような申し訳ないような気持ちになった。これまでの生活を振り返ると、『エラい』なんてホメえもらえる資格はない。あまり勉強はせず、バイト代は男の気を引くための活動資金につぎ込んだ。人に胸を張って語れるような学生生活は送っていない。
(もっとちゃんとしないと……)
心から思わずにいられなかった。






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