教えて!恋愛の女神様
 一講目。何事もなく講義を終えると、次の講義をする教室へ向かって移動した。もちろん、マアコ、ユカ、アミも一緒に。
 週明け初日、彼氏がいる彼女たちは、どんなデートをしたか自慢するのに忙しい。
「ユカぁ、タカシ君とぉー、リスミーリゾートへ行ったんだぁー」
「私なんて沖縄よー!それもサプライズで!有名IT企業に勤めている彼から突然空港に呼び出されて行ったら飛行機のチケット渡されて、『リゾートホテル予約しているから行こう』って。当然、座席だってアップグレードしてあって、すっごい素敵なウィークエンド・トリップだったんだから」
「私は、熱海の高級旅館に一泊。近いけど移動距離が少ない分体は疲れないし、外科医の彼が一番広くて見晴らしのいい部屋を取ってくれたから、ラグジュアリーな夜を過ごせたわ。『アミ、愛してるよ』って言って、色々尽くしてくれたし」
「ユカだって、タカシ君に尽くしてもらったもん!私が紅茶飲んでケーキ食べている間に、ファスト・パス取ってくれたりレストランに予約してくれたりしたもん!」
「私だって!ケンゴは忙しいのにわざわざ休み取ってくれたんだから!『愛してるよ』なんて、何十回も言ってくれたんだから!」
話せば話すほど三人の口調は激しくなる。階段を上り二階へ向かっているのだが、一階から最上階の四階まで響き渡るほど声は大きい。前後を歩いている学生だけでなく、すれ違う学生までびっくりした顔で私達を見た。話すネタがなく聞いているだけの私は、だんだん居心地が悪くなってきた。
「ねえ、ちょっと。アミ、ユカ、マアコ、声大きすぎ。もう少し小さい声で話なよ。みんな変な顔で見ているよ」
「別にいいじゃない。休み時間なんだし。それに知佳、私たちがうらやましいからってジャマしないでくれる?私の選んだ男がどれくらいすごいか認めてもらわないと腹立つから」
「え?」
「そうそう。男いない女は話に入る資格ないの」
「黙っててくれる?」
三人はいっせいに叫んだ。私は軽くヘコんだ。彼女たちの言葉は、フラれてまだ膿がグジュグジュ出ている傷口に塩を塗る行為だった。
(このまま、アミ達と付き合っていていいのかな?)





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