井上真緒編
とにかく真緒は驚いてしまった。言葉すらでなかった。とっさに寝室に入ったが、そこにも現れないかとびくびくしながら、布団に入った。真緒は、これまで幽霊というのは見たことがなかったが、恐らくこれこそその幽霊なんだろうと思った。しばらくしてから、その化け物がいたほうを、こっそりドアを開けてみてみると、もうそこにはいなかった。もしかしたら、見間違えたのかもしれない。ただ、確かに真緒は見たと思った。それも、買い物をしてきたものを冷蔵庫に入れて、あるもので食事を作って風呂には入った。テレビを見ながら自分が見たのは幽霊だったのだろうかと思いながら、どういうことなのかを考えていた。次の日の朝も、あの化け物はいなかった。真緒は会社に行った。

チリ子「ねえ、真緒どうしたの。なんか体調でも悪いんじゃない」
浮気女が声を掛けてきた。
真緒「うん。ちょっといろいろあって」
チリ子「病院に行った」
真緒「行ってないよ。仕事があるから休めない」
チリ子「なにいってるのよ。結婚するんだから、体に気をつけないと駄目だよ」
真緒「うん、分かってる」
チリ子「会社休むんだったら、私に任せなよ」
真緒「え」
チリ子「なんとかするよ」
真緒「なんとかするって」
チリ子「課長の弱点握ってるからさ、あてにしなよ」
真緒「本当なの。それだったら、頼もうかな」
チリ子「今から帰る」
真緒「今日は、大丈夫。本当に悪くなったときにね」
チリ子「分かった」

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