井上真緒編
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田中は、中に入っていって、駅前でいいところはどこですかといって、社員を表まで引っぱり出して話を聞いた。その社員は、あの商業ビルだったら、いくらぐらいというような話を客だと思ってしてくれた。田中はその社員を寿司屋に誘って、更に話を聞いたが、向こうが、こっちは客ではなくて、リフォーム会社だというのを知ると、なんだよという顔をした。それで、最後に、真緒たちが交渉している物件の話を聞いたら、あまり知らないとは言ったが、いくらぐらいだろうという話はしてくれた。それが正しいかどうかは分からないが、会社のほうの情報とそれほど違いはなかった。それと、価格は下がり気味だというのも、会社と同じだった。真緒たちは、買い取りからリフォームをして、ある程度までは、価格も想定しなくてはいけなかった。実際は営業が販売するのだが、価格は最後の最後には、営業が決めるものだった。不景気で業績が上がっていたが、実際は、不景気になる前から、このスタイルで業績を上げていたのだ。ただ、真緒では、買い取りだの、価格の決定だのということに関しては、仲間から見たら、かなり力不足に見えたはずだ。ただ、真緒のリフォームの感覚は、もしかしたらかっていたかもしれない。一応短い時間だったが、いつもの現場を見て真緒は会社に戻ってから、エリに会いに行った。そしたら、エリだけじゃなくて、はるなもいた。これは相談しずらいなと思ったが、呼ばないでともいえなかったし、きたらきたでもうしょうがなかった。