井上真緒編
真緒は結婚が駄目になって、本当に頭にきていた。テーブルを押して、のぼって、手でチアキの殻をむしり取ろうとした。それはどろっとしていて、なんとも感触が悪かったが、不思議なことに殻は、手をすり抜けてしまって、チアキを捕まえることはできなかった。粘着質の液体だけが手に残ったが、何度やってもそれは同じだった。
真緒「あんたいったい何なの」
チアキ「何言っているのよ。あなたはとんでもないことをしようとしたわね」
手を洗いながら、いった。真緒「化け物だからね。でも、これなんなんだろう。なかなかとれない」
真緒は、なんとか洗い落としたが、それからが奇妙だった。真緒の手は、半透明のようになって、手が消えたようになったり、戻ったりを繰り返していた。
真緒「いったい何よこれは」
チアキ「それは罰ね。神を愚弄するとそうなるのよ。だからもうつまらないことはしないことね」
真緒「なるほどね。敵にあったときに、毒をはく動物と同じだ。ということは、あなたにとっては人間は敵なのね」
チアキ「ものはなんとでもいうことはできるわ」
真緒「この手はどうなるのよ」
チアキ「さあね。それは、あなたの心がけ次第なんじゃない。入れ替えれば元通りになるし、そうでなければ消えてしまうかもしれない」

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