キミがスキ
深夜12時半過ぎ。
壁に寄りかかり、右手にはタバコ、左手には釣竿袋を持ち
アパートの前でわざと見えるように待つ。
これから釣りですか?
そう思われるようなフェイクだが、中身は釣竿じゃない。
護身用の刀?
まさか、そんな物を素人が持ったら銃刀法違反になる。
なので、中身は昔取った杵柄の懐かしい品が入れてある。
「店長…?」
暗闇の中、様子を伺う声は薄ら笑いのように聞こえた。
近付いてはくるが、警戒しているのか足取りは重い。
「近く通ったからさ、居るかなぁと思って」
「何すか?それ」
「釣りはじめようかなぁって、海ガールとか流行ってるし」
「見え透いた嘘つくなよ…」
目の前で足を止めた瞬間
佐々木はナイフを振りかざして来た。
庇いきれなかった左手から血が溢れ、滴り落ちる。
それでもナイフを持つ手を押さえた。
「ここでやる?向こうの空き地なら埋められるよ」