キミがスキ
「きつくない?」
「大丈夫…です」
彼女は私の浴衣を綺麗に整え、背中の帯を結び直し始める。
私からは見えないけど、随分と手慣れてるようだった。
何を話せばいいのか分からずに黙ってると、彼女が口を開く。
「いいな…」
「え…?」
「名取さんは何でも似合うから」
そう言いながら笑う彼女に嫌みはなくて
アタシはお世辞の一つも返せないまま、黙ってしまった。
そんなアタシに何を思ったのか、彼女は話を続ける。
「あの時…花見の日ね、地震が起きて…湊ちゃんが部屋に来たとき、わざと抱きついたの」
「…」
「名取さんが見てるって知って…わざと…」
「そう…ですか…」
返す言葉なんてない
ごめんなさい
そんな上辺だけのセリフ
今は合わないような気がした。