愛と銃と。


あたし達は駅まで歩いてきた。

そんな時だった。


「…あ、れ?」


陽翔が急に声を漏らした。


多くの人々が行き交う駅。

その雑踏の先を見つめて。


あたしもその先を見つめる。

見つめて、驚愕した。

驚愕して、裏切られたような
そんな気分になった。


確かにもう別れてるから
相手が何したって勝手。

でも。

あたし達のあの恋なんて
薄っぺらいもんだったのかなって。

違うと思いたいけど…。

そう思うことしかできない。


絶望にも似た感覚。

もしかしたらまた颯が突然
「やりなおそう」と
言ってくれる日がくるかもしれないと
淡い期待を抱いていた。

そんなのはただの
夢や理想でしかなかった。

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