秘め事
『突然ごめんね。小日向君にちょっと聞きたい事があるんだけどいいかな?』



俺らの楽屋に入ってきたのは藤堂 楓。


愛莉の兄貴だった。



『何ですか?』

『愛莉の居場所を知らない?』



俺以外は事情を知らないから、藤堂さんの口から愛莉の名前が出て驚いている。



『残念ですけど、知りません』

『そう…君なら知ってるかと思ったんだけど。知らないならしょうがない…ありがとう』



部屋を出ていこうとする藤堂さんを呼び止めた。



『こんなに堂々と愛莉の事聞いていいんですか?』

『愛莉から話を聞いてるみたいだね。もういいんだ…よかれと思って隠してきたことが愛莉を傷付けていた。愛莉を傷付けてまで、隠し通す意味はないんじゃないかって話になったんだ』



こんなに悲しそうに笑う藤堂さんを見たら、愛莉はどう思うんだろう。


きっと、愛莉も悲しむんだろうな。






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