秘め事
愛莉は社長に挨拶すると、おぼつかない足取りで、佐伯さんに支えられながら後ろを向き歩き出した。


愛莉なりの思いや考えがあっての事だとは思う。


でも、俺と目も合わせねぇでどっか行こうとする愛莉にムカついた。



『愛莉』



俺が名前を呼ぶと肩を揺らし、驚いた顔をして振り返った。



『忘れ物』



愛莉に向かってそれを投げると、慌ててキャッチし更に驚いた顔になる。



「…渡す相手間違ってるよ」

『間違ってねぇよ』

「間違ってるよッッ!!」

『間違ってねぇよッッ!!お前が勝手に置いて出てっただけだろうがッッ!!』



愛莉の使っていたマンションの鍵がテーブルの上に置いてあるのを見付けた時は、情けねぇことに泣きそうになった。






< 144 / 166 >

この作品をシェア

pagetop