秘め事
メールを送ってきた相手に会うため、私は夕方渚の家を後にした。


夏だからか、まだ夕日は出ていない。


1日が長く感じる。



通いなれたビルに着き、私はセキュリティーカードをかざし中に入った。



「急に呼び出してごめんなさいね」

「平気。どうしたの?」

「レコーディングの日程とか、今後の予定をちょっと相談したかったのよ」



私にメールをしてきたのは私が所属している事務所の社長。


社長とは大学1年の時に知り合った。


大学の音楽室でピアノを弾きながら歌っていたら声をかけてきた。


歌でデビューしないかって言われたけど、その時は断った。


別に歌や音楽に興味はなかった。


私がピアノと歌を始めたのは、家族の誰にも負けない何かをやりたかったから。


運動音痴の私に出来ることと言えば、その時は歌とピアノしか思いつかなかった。







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