秘め事

ジレンマ

足に鉄枷が付いてるんじゃないかってくらい、私の足取りは重い。


心も重たい。


理由は簡単。


実家に向かって歩いているから。


今日はお父さんの誕生日。


家族の誕生日には必ず家にみんなで集まるようにしている。


どんなに仕事が忙しくても。



「愛莉さん、お帰りなさいませ」

「ただいま」

「あらあら、またお綺麗になられましたね」



玄関の扉を開けると、笑顔で迎えてくれたのは私が小さい頃からお手伝いさんをしてくれている美紀恵さんだった。


リビングに行くとまだ誰も来ていなかった。



「愛莉さんが一番ですよ」

「みんな忙しいからね」



美紀恵さんが冷たいジャスミンティーを用意してくれた。


外が暑かったから凄く美味しく感じる。






< 91 / 166 >

この作品をシェア

pagetop