追いかけっこ(仮)
でも、今の言葉はあながち嘘ではない。
“過去”そう聞くだけで、
風音の顔が過り、私の左腕が赤く染まったあの日が蘇る。
「……悪かった。」
「ううん。私が悪いから。」
「何で?」
「私から話聞くとか言っていて。」
私は俯いた。
すると、頭にぽんぽんとちょっとの重みがかかった。
伊次龍樹のその動作に、
私の心が少し暖かくなった。
……少しだけ、話してみよう。
私はそっと伊次龍樹を見上げた。