追いかけっこ(仮)
「彼女は私を見ると、
私めがけてガラスの花瓶を投げつけたのっ。
左腕が、真っ赤に染まって……んッ!!」
私は話の途中で口を塞がれた。
……伊次龍樹の唇によって。
「お前、もうしゃべるな。」
「……っ、」
「泣け。」
そう言って私を抱き寄せる伊次龍樹。
背中に回る腕が暖かくて、
私は自然と涙が溢れていた。
泣いた子どもをあやすように私の頭をぽんぽんと撫でる伊次龍樹。
その手に安心して、
いつの間にか眠ってしまっていた。