追いかけっこ(仮)
……けど、
何だろう、この空虚感。
“怪盗V”は、私だよ。
無性に言いたくなった。
私が“怪盗V”なんだよ……。
気づいて欲しい。
こんな気持ちになったのは初めてで。
不可解な空虚感や思考に、
私の心はひどく動揺していた。
「私は齋藤華恋。」
「は?」
突然口を開いた私に怪訝そうな顔をした龍樹。
「なんでもない。こっちの話。」
「意味わかんね。」
クスッと笑う龍樹に胸が締め付けられる思いになった。