追いかけっこ(仮)


「伊次くんが運んできてくれたのよ。」

「そうだったんだ……。」


龍樹は照れたように私から顔を背けている。


私は、その光景にクスッと笑みを溢した。


「龍樹、ありがとね。」


私が笑ったままお礼を言うと、


「……ん。」


相変わらずそっぽを向いたまま、
私の頭をぽんぽんと撫でた。

先生はふふふ。と笑って、


「じゃあ、顔色もよくなったし、チャイムが鳴ったら教室に戻りなさい。」


と、カーテンを閉めた。


再び私と龍樹のふたりきりの空間になる。


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