追いかけっこ(仮)
「……。」
私は風音の瞳の異常さに、
足がすくんだ。
「私はこんなに嬉しいのに。」
風音は心底嬉しそうに微笑むと、
ナイフを舐めた。
「ね、だから、動かないで。」
「……。」
「華恋、命令よ。」
「……。」
「あ、そうだ。」
私に近づく風音の足がピタリと止まった。
「伊次くん、だっけ?
あの男が、華恋に近づかないようにしなくちゃね。」
風音の言葉に、
私はバッと顔を上げた。
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