追いかけっこ(仮)


龍樹は興味深そうに室内を見回していたが、
暫くして、私に視線を向ける。


「怪盗V、話してくれるな?」


龍樹はそっと口を開いた。


「……ふぅ。」


私は一度溜め息をそっと吐いて、
気分を落ち着かせる。


「さて、何が聞きたいのかしら。」


いつも通りの“怪盗V”の態度で、
にっこり笑ってそう言葉を投げかける。

まるで、この状況でさえも楽しんでいるというように。


「何故怪盗Vになったのか。」


予想通りの龍樹の質問に、
思わずクスッと笑ってしまった。


「何で笑ってんだよ。」

「いや、別に?」


「………。」


私はゆっくり言葉を紡ぎ始めた。


< 194 / 195 >

この作品をシェア

pagetop