追いかけっこ(仮)
龍樹は興味深そうに室内を見回していたが、
暫くして、私に視線を向ける。
「怪盗V、話してくれるな?」
龍樹はそっと口を開いた。
「……ふぅ。」
私は一度溜め息をそっと吐いて、
気分を落ち着かせる。
「さて、何が聞きたいのかしら。」
いつも通りの“怪盗V”の態度で、
にっこり笑ってそう言葉を投げかける。
まるで、この状況でさえも楽しんでいるというように。
「何故怪盗Vになったのか。」
予想通りの龍樹の質問に、
思わずクスッと笑ってしまった。
「何で笑ってんだよ。」
「いや、別に?」
「………。」
私はゆっくり言葉を紡ぎ始めた。