追いかけっこ(仮)
「……何??」
私は気を引き締める。
危ない危ない。
油断してた……。
泥棒に油断は大敵。
「いや……、何でも。」
「そう。」
伊次龍樹の顔が心なしか赤くなってるように見える。
「齋藤さ、間近で見ると、綺麗だな。」
………、
「はッ?!!!!!」
不意打ちに言われた言葉に、素っ頓狂な声をあげる。
「な、何をいきなり……。」
「いや、そう思ったから。」
“そう思ったから”って……、
急に真顔でそんなこと言われると、調子狂う……。