追いかけっこ(仮)
「危なッ……!!」
グィッ!
ポスッ。
伊次くんは私の腕を掴んで、自分の方に引き寄せた。
「あ、ごめん、ありがとう。」
私はお礼を言って、
伊次くんから離れようとした。
……迂闊だった。
カチャン。
「ッ!!」
私はバッと伊次くんの顔を見た。
伊次くんは少し悲しそうに私を見る。
「……ごめん。」
私は俯いて唇をキュッと結んだ。
泥棒に油断は大敵。
いつも言ってたはずなのに……。