何よりも君が愛しくて…



「おい、来斗」


俺が走って来た方から、朔哉がゆっくり歩いてくる。


「その子知り合い?」

「ただのクラスメート」

「あ、そうなんだ」


俺はこのとき、あることを思い出していた。
中学最後らへんの夜。
雨の日だった。
女の子が膝を抱えて座っていたこと。
知らない男の人に傘を渡され、無理に笑顔を作っていた少女を。


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