戦場のガールズライフ~派遣社員奮闘編~
カタカタとキーボードを打ち込む岸谷さんの足元には、キャビネットに入りきらずにあふれているファイルがすでに3つもあった。


キャビネットは一人1つ、机の上にファイルは1つしか置いてはいけないと決められている。クリーンデスクというヤツだ。整理整頓、仕事の効率もアップするのだとか。更に、防災対策として机の下にファイルを置いてはいけないことになっている。地震の時に机の下に潜れないから、という理由で。


私のキャビネットの中にはまだ岸谷さんに渡す予定のぶ厚いファイルが2つもある。


「…岸谷さん、ファイル、あふれてますね」


「あ、そうなんです。すみません。でも、これとこれは神田さんに引き渡す予定なんで…」


はにかむように笑う岸谷さん。うう、本当に可愛い人だなぁ。本当はいっぱいいっぱいのはずなのに。うう、罪悪感。


急遽、私の仕事を引き継ぐことが決まった岸谷さんの負荷をバラす為、岩原GMは岸谷さんが担当している課を2つ、神田さんに引き渡すように言った。神田さんは今年成人式を迎えたばかりのぴっちぴちの女の子だ。ぱっつん前髪がこれまた可愛い。


「なんか、すみません。この後まだ2つファイルをお渡しする予定で…」


「いいですよ。しょうがないです。これも全部岩原GMのせいですから」


おお、グサリ。笑ってはいてもやっぱり怒ってんだなぁ、と私は余計に腰が低くなる。外山さんのこともあって、岸谷さんは相当ストレスが溜まっているのだ。

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