翼をください。
「景、ちょっといいかな?」

 俺はわたわたと本を枕の下に隠した。

 「お、おう!」 

ヤバ、声裏返った。

静かに扉を開けて入って来た愛結は、
お風呂上がりらしく、
長い髪を下ろしている。

「どこを探しても本がなくてねーー。  
景、知らない?」
 「ぃ、いや、
土屋さんの所に忘れたんじゃないのか?」 

咳払いをして誤魔化す。 

「そっかーー…
続きスッゴイ気になるのになぁ~~……」 

愛結は肩を落として帰って行った。 

俺は深い溜め息をつく。

愛結に悲しい顔をさせたくなくて、
本を出してしまいそうになった。

でも、駄目なんだ。

 彼女には、夢がある。
叶わないと知りながらも、
今も尚追い続ける夢が。

 壊してはいけない。
彼女の笑顔を、見ていたいから。
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