翼をください。
「行ってきま~~す。」 

いつも通りの朝。

幼なじみと肩を並べ、歩き慣れた通学路。

 この道を二人で歩くようになって、
もう13年が過ぎようとしていた。

 幼き日に両親を亡くした私の傍に、
ずっと居てくれた兄のような頼もしい、
時には世話が焼ける弟のような、
かけがえのない存在。

 「主がいなくなって15年も経つのに
まだ何か出てくるとか、
  お前ん家どんな博物館だよ?」 

夕陽 景(ケイ)は、
私の鞄をひったくりながら言った。

 「あはは……」

 私は苦笑いを返し、景を見つめた。

 いつからか、
毎日持ってくれるようになった鞄。
いつの間にか、抜かされた身長。 
あの頃の二人とはこんなに違うのに、
今までちっとも変わらなかった関係。

 手は繋がなくなったけど。
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