翼をください。
「何ですか?これ」 

忘れ去られ、埃を被ったその本は、
中は普通に読める字だった。

 パラパラとページを捲っていくと、
所々挿絵がある。

「小説か?」 

隣から本を覗き込んでした景が言った。

 土屋さんは、悪戯に微笑んで言った。

 「君のお祖父様が書いた本さ。」 

どうも子供っぽい笑顔だったが、
土屋さんがやると、
様になってしまうのだった。

私は、掠れた文字を手で撫でながら、
本を開いた。
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