【短編】大空に舞う一輪の花のように
そんな夏のある日。
俺はクソ長い練習を終え、帰宅道を歩いていた。
時計を見ると、短針はすでに10時を通り過ぎていた。
ふと、俺の先にある横断歩道の信号機が点滅しだした。
俺はそれを見た途端、無意識的に走っていた。
疲れていたので、早く家に帰りたかった。
俺が横断歩道を渡っていると、不意に俺の視界に、
何か黒いものが飛び込んできた。
俺がそれの方に顔を向ける。
「……ぇ……?」
『重量トラック』
俺の脳はそれを認識した瞬間、活動を停止した。
徐々に、ゆっくりと近づいてくるように見えるそれに、
俺は身動き一つとれなかった。
あぁ…、こんなもんか…俺の人生……。
俺は黒いそれを見つめながら、心の中で微笑んだ。
次の瞬間、もの凄い衝撃と共に、
俺の視界は黒く塗りつぶされた。