【短編】大空に舞う一輪の花のように
――――ミーンミーン…ミーンミーン…
蝉のうるさい叫び声が聞こえる。
突き刺すような夏の日差しが、シーツにくるまった俺を照らしていた。
「…起きたの?」
そのとき不意に、ある声が俺の耳をくすぐった。
「……母さん…?」
俺がそう呟きながら声のした方を振り返ると、そこには案の定俺の母が座っていた。
「…心配した?」
「…当たり前よ」
「…そっか……」
何でこんなことを聞いたのかは自分でもわからない。
ただ、俺はこの素っ気ないやり取りに何か温かさを感じた。
何故か安心できた。
『俺は独りじゃないんだな』って思えた。
ガラガラッ
その時、病室のドアが開いて白衣を着た中年の男が入ってきた。
そして、「ちょっと」と言って、母を病室の外に連れ出した。